「灯台、下(もと)暗し」

 
(「あるレコード屋の嘆き」改め)
「Too Much On My Mind」 第二話。

「灯台、下(もと)暗し」

 ここでの灯台は本来は、ランプ代わりにろうそくなどを燃やして灯りにする台の事で、その下には光が届きにくいという意味らしい。
 でも、私は大方の人と同じで、岬や港などにあり、遠くを行く船に灯りで位置を知らせるあの灯台だと思っていた。つまり、遠くの船には明かりとなるが、自分の足下は暗いという意味だと。

 前置きが長くなったが、単刀直入に、今のジューク・レコードの事を話そう。今ジュークは「灯台下暗し」の様相を呈している。音楽での灯台守を目指し、多少はその役割を果たせてきたかなと思うが、それには、足下が暗くなるという、文字通りの盲点があったのか。

 以前からそうであったのだが、最近は特に遠来のお客さんが目立つ。別にその数が増しているのではないが、市内の客の占める割合が小さくなっているので、そういう気がする。統計を取った訳ではないが、これまでは福岡というローカルな地元のレコード店だから、当然近場のお客が多く、全体の8~9割を占めていたと思う。でも、前回書いた「あるレコード屋の嘆き」のように、ネット上への人口流出で、地元の人の絶対数が減ってきて、市外の人の割合が目立つようになっている。
 この数ヶ月でも、一番多いのは東京からの人で、ミュージシャン、業界人、熱心な音楽ファンと、出張や私的な用事の際に来てくれている。他にも、北海道、郡山(福島)、木更津(千葉)、金沢、岐阜、京都、大阪、四日市、岡山、広島、山口、下関、松山から、遠路はるばる。さらには、アメリカ、韓国からも。
 同じ九州でも、沖縄、薩摩川内、熊本、大分、日田、長崎、佐世保、佐賀、鳥栖、唐津、武雄といったぐあい。常連さんだから勘違いするけど、福岡でも福岡市外で、北九州、飯塚、古賀、春日、糸島、朝倉、浮羽、大牟田の人が目立つ。いたずらに羅列するようだが、このご時世の中、こんなにいろんなところから来てくれると、本当に意を強くするし、感謝に堪えないから、思いつく限りの方にここでお礼を言うつもりで書いた。一方でジュークへの叱咤激励だとも感じている。
 
 なぜ、そう分かるかというと、傾向として、あまり顔なじみでないのに、大人買い的にまとめて買って行ってくれる事が多いので、つい聞いてしまう、「遠くからですか?」と。すると、上のような結果になる。それと、ジュークには7%くらい還元する、期限なしのポイント・カードがあり、大量に買う人は、カードが満タンになりやすい。1000円か2000円の割引をする時に、カードに必ず住所を書いてもらうので分かる。すると、私はついつい嬉しくなり、「松山ですか、モア・ミュージック行きますよね」みたいな会話になる。実際は、もっといろんなところから来てくれているかも知れないけど、逐一尋ねている訳じゃないから、それ以上知る由もない。
 
 はっきり言って、今のジュークはポテンシャルが落ちている。思ったようなセレクションが出来ていないので、魅力を感じないだろう。まずレコード業界の取引先が縮小している。マーサ&ザ・ヴァンデラス<MARTHA & THE VANDELLAS>が歌う「砂地獄(Quicksand)」の様な状態。恋の「クイックサンド」なら嬉しくもあるだろうが、もがけばもがくほど深みにはまる仕事上の泥沼状態は、誰しも辛い。
 
 強がりを言うようだけど、私は音楽を楽しむ事をしないというのは出来ない。音楽に対する興味は尽きないつもりだ。その点では楽天的。ちなみに先日の福ビルのディスク・セールでも、大阪の名曲堂や高松のルーツのブースから、フレンチ・ポップやファドや歌謡曲などのCDとLPを、その安さに惹かれて、衝動的に20枚ほど買ってしまった。一時間足らずの空き時間での話だから、時間に余裕があったら、もっとと言う事になっていただろう。その日入手したものは、その場で初めてその存在を知ったものばかり。そう、現場には思わぬ発見があるし、何より現物が訴える力は大きい。
 
130616_01
THE KINKS / Face To Face (1966)

 ジューク・レコードがこのように広域的、グローバルになったという事は、伊達に30有余年やってきた訳じゃないと言ってもらっているようで、そういったご愛顧は嬉しい限り。でも、そうだからと言って、ネット販売にシフトしたくない。依然としてジューク・レコードとしての量と質は保持しているつもりだ。私は、福岡、博多という言葉にこだわりたい。キンクスで知ったFACE TO FACEの言葉の意味する状況を大事にしたい。地元の人、養老疾駆。
 
 
2013.6.16
ーーーーKeep On Jukin’ーーーー

このブログを読んだ感想を、送ってくだされ。待ってます。迷惑メール防止のため、ここではなく、私のfacebookのページに願います。facebookの友人でない人は、友人になっていただきたい。養老疾駆 僅奇異康

または、メールkoj@juke-records.netジューク・レコード・BBSでも受け付けています。