「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム (A Change Is Gonna Come)」

2013.6.12

GROOVY TUNES 100 / 私の好きな曲(These are a few of my favorite songs)

#6「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム (A Change Is Gonna Come)」

 多くの人に愛され、歌手やミュージシャンにカヴァーされる事が多いほど、その曲はいい曲だと言える。私の「Groovy Tunes 100」もその意向に沿ったものと言っていい。
 だが、その中には最初に演じた人(オリジネイター)のものが素晴らしすぎて近寄れない、たとえうまくカヴァーしても、オリジナルには遠く及ばないという曲がある。それを私はアンタッチャブル (untouchable)な曲という範疇を設けて、自分の感想を書いて行きたい。

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SAM COOKE / Ain’t That Good News (1964)

 そのアンタッチャブル・チューンズの筆頭クラスにあるのが、サム・クック <SAM COOKE>の「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム (A Change Is Gonna Come)」だ。

 矛盾するようだが、いくつかのカヴァー曲を上げてみる。まずはザ・バンド <THE BAND>が自分たちの愛好曲ばかりを集めたカヴァー・アルバム『ムーンドッグ・マティネー (MOONDOG MATINEE)』で取り上げたヴァージョン。このアルバムが出た当時の1973年、私はぱわあはうすに出入りし、夢中になっていたロックも特に、土の香りがするものを求めていた。そういった私を最も捕えて離さなかったのがザ・バンドだった。最初の4枚のアルバムは本当によく聴いた。そして待ちに待った新作が何とカヴァー曲ばかりのアルバム。だが、当初はショックだった。というのはザ・バンドこそはオリジナルなロックを作り出す権化のように思っていたから、他人の曲ばかりのアルバムは、ザ・バンドが後退したと思った。その一方で、このアルバムの収められた曲の大半は、当時ほとんど知らなかったので、新鮮に響いていた。そして皮肉にも、結果として、その後の、私のブルース以外のルーツ探しの旅に出る重要な水先案内となっていく愛聴盤となって行く。ここからリー・ドーシー <LEE DORSEY>の「Holy Cow」経由で、さらなるニューオーリンズ音楽へ道が開けたりした。
 ザ・バンドの「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」はベースのリック・ダンコ <RICK DANKO>のかすれ声での情けない歌が、かえってリアルでいい。身の丈にあった、決して上手でない歌いっぷりが。手作り感のある演奏では、キーボードの魔術師ガース・ハドソン <GARTH HUDSON>が間奏で吹くサックスが黄昏れたムードに満ちていて、切ない。

 当然ながらソウル系のカヴァーが多く、しかもオーティス・レディング<OTIS REDDING>、アリーサ・フランクリン<ARETHA FRANKLIN>、ボビー・ウォーマック<BOBBY WOMACK>、そしてソロモン・バーク<SOLOMON BURKE>といった、正統派というか、ソウルの本流と言っていい人たちが取り上げている。いかにもソウルのアイデンティティを確かめているかのような様相だ。
 特にオーティスは素晴らしい(『OTIS BLUE』収録)。一言一言を絞り出すような、熱にうなされたような、独特のオーティス節が聞くものの耳を奪う。そしてアリーサも素晴らしい(『I NEVER LOVED A MAN THE WAY I LOVE YOU』)。ピアノだけのカデンツァ的な入り方から、徐々にソウルの炎を燃やして行くような、アリーサだけにしかできない歌を展開して行く。さらには、まさにサム・クックの直系と言っていいボビー・ウォーマックが、「私の旧友であり、偉大なる伝説のサム・クックに捧げる」と語ってから始める歌も、まさしく万感の想いを込めたという出来で、大きなスケール感を持って歌う。(『HOME IS WHERE THE HEART IS』)これらのいずれもが自分の歌に昇華されていて、申し分の無い出来になっている。
 
 他には、アーロン<AARON>がそのヴェルヴェット・ヴォイスで縦横に歌うネヴィル・ブラザーズ<NEVILLE BROTHERS>のものもいい(『YELLOW MOON』)。そして、1995年のヒップ・ホップの最盛期に、ニュー・クラシック・ソウルの呼び声高く登場した四人組ソウル・グループ、ソロ<SOLO>のデビュー作『SOLO』でも、若さに似つかぬ渋い歌を聞かせていた。

 まるでソウル・シンガーとしての試金石であるかのように、アル・グリーン<AL GREEN>、ジェリー・バトラー<JERRY BUTLER>、マンハッタンズ<MANHATTANS>、アーサー・コンリィー<ARTHUR CONLEY>、エヴェリン・シャンペン・キング<EVELYN “CHAMPAGNE” KING>、ティナ・ターナー<TINA TURNER>なども歌っている。

 しかしである。オリジナルのサム・クックはすべてを超越している。無垢な、至高の領域にある。だから、私はアンタッチャブルと言いたい。音楽でありながら、その技巧や方法を超えたものがここにある。それが何かと的確に言えないが、「私は川のそばで生まれた。小さなテントの中で。それからはあの川のように、流れ続け、長い時が過ぎた。だが、変化は訪れる、きっといつか。そう、きっと。,,,,」。サム・クックの歌は、時代を超えて、聴く者を震わせ続けるだろう。

 映画『マルコムX』では、黒人解放運動の活動家としての存在感を高めていたマルコムXが、身の危険を感じながらも、結果的に暗殺される事となる演説会場に向かう車の中のシーンで、この曲が流れる。その時の映画館で私は感極まってしまった。

 ここまで、ついつい力が入ってしまったが、本当にいい曲なので、知らない人も知ってる人もは素直な気持ちで、是非何度も繰り返し聞いて欲しい。こういうポピュラー・ソングもあるということです。
 
 
 
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